サブリミナル・マインド
人間は普通、自分がした選択を、自らの明確な意志に基づいて行なったと考えています。どの服を買おうか、飲食店で何を注文しようか、相手の発言にどうやって反応しようか。これは自由意志と呼ばれているもので、その存在は疑う余地のないように思えます。
「しかし、実は自由意志などというものは存在しない」と言われたら、どう思いますか?ほとんどの方は「何を言ってるんだ」と笑うでしょう。もちろん、自由意志の存在が100%否定されているわけではありませんが、人間がする選択は、思っている以上に外部の影響を受けているようです。
この「サブリミナル・マインド」という本には、そういった主張の理論や、それを裏付ける様々な実験が出てきます。どれも面白いものばかりです。
特に気になったのは、第2章で紹介されているジェームズ・ランゲ説。ふつう人が泣くのは、悲しくなったからですが、この説は「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」というのです。この説によれば、何か出来事があるとまずそれに反応して身体に変化が起こり、その後それに伴って感情に変化が生じる」ということです。
これは自分の推察ですが、どちら(泣く→悲しい、悲しい→泣く)もあるんじゃないかと思いますね。つまり、泣くという行為と、悲しいという感情は相互に作用しているのだと思います。結局、精神が物質の世界に基盤を持つならば、精神的な変化とはすなわち物質的な変化ですから、悲しいという感情も一種の肉体的な変化と言えるのではないでしょうか。
他に興味を惹かれたのはやはり、タイトルにもあるサブリミナル効果です。次の実験は非常に有名な科学雑誌「サイエンス」に掲載され、その後の追試でも正しさが確認されているそうです。
ある特定の図形Aをほんの一瞬だけ被験者に見せます。被験者には見たとは分からない程度の時間です。その後図形Aと、それとは異なる図形Bを一緒に見せます。そしてこう聞くのです。「あなたが見たのはどちらの図形だと思いますか」
集計した結果には、有意な差は見られませんでした。つまり約半分の被験者は、自分が見たのとは別の図形を答えていたのです。意識的に知覚できない程度の時間なのですから、当然といえば当然と言えますね。
しかし面白いことに、
「あなたはどちらの図形が好きですか。」
と聞くと結果が変わり、Aと答える人の割合が多くなるのです!これは単純呈示効果などと呼ばれるもので、第七講で登場します。
非常に興味を持って読むことができました。面白そうだと思った方は、ぜひ読んでみてください。